沢に風を通せ

枯れ沢復活&ホタルを飛ばす会で、八王子にある恩方の森を訪れました。
ひとりで山と向き合ったり、沢の源頭部までつめたり、とても充実した1日を過ごしました。

朝会

ホタルの会の前に、朝イチから森に入る朝会なるものを企画してやってます。
森って、昼よりも朝の方が気持ちが良いのです。
森の空気と水が動いているのです。霧がでたりしてます。ちょっと幻想的です。そのせいか鳥もよく鳴くんですよね。

今回の朝会は「ソロ」をやりました。

ソロとは冒険教育のプログラムのひとつで、一人で自然の中で過ごすことです。
目的は、自然と対話することであり、自分自身との対話、つまり自分を振り返る時間を味わい尽くすということです。

人は日常生活で五感を閉じて生活をしています。
見えなくし、聞こえなくし、感じなくして生きています。
一人で自然の中に身をおくと、この五感が開放されていきます。

見えていないものが見えてきて、聞こえなかったものが聞こえてきて、感じていなかったことを感じられるようになります。

例えば、風に揺れる木々のひとつひとつが見えてきたり、鳥の鳴き声が聞こえてきたり、風にふくまれる湿度を感じることができるようになっていきます。

参加者4人が、適当に自分が気になる所にいき、静かに過ごす、じっと座っていても良いし、造作をしても良いというルールでスタート。
1時間後に感じたことをシェアするということをしました。

人ぞれぞれ感受性が違い、課題設定も違い、解決方法も違うんですよね。

改めてそんなことを思い、思いついたことは、あくまでも科学的には仮説であり、実際にやってみて、数年後、数十年後に検証してみないと答えはわかりません。
だからこそ答えはないし、世の中はやってみないとわからないことだらけなんですよね。

僕の気づきは、明日は大雨の予報。
雨の流れを想像して、人間がちょっとしたキッカケを作ることが重要。
人力では無理なので、自然の力をどれだけ活用するかという視点を持ち造作をしようということ。

そして、ブログを書いている造作をした翌日の東京は大雨であり、風がかなり吹いています。まるで嵐のよう。ねらい通りです。

現在の天気予測

沢の藪をはらえ

朝会を終えて枯れ沢復活&ホタルの会。

集合地に小学生の軍団が現れてビックリ。
どうも森で自由に1日を過ごすことを毎週行っている子どもたち。
自由人たちに暮らしやすい社会になるといいなと思う。

朝のチェックインをすませて、精鋭3名が「風組」と称して五ノ沢へ。

風組には意味を込めて名付けました。
宇宙を構成する4つの要素があると古代ギリシアでは考えられていました。その4つとは、地・風・火・水の元素です。
沢の藪をはらって風通しを良くするのが目的なので風組と名付けました。

四ノ沢、五ノ沢の入り口は、枯れ沢ですね(分岐から)

午前中は「藪をはらって風を通す」という意図でスタート。

以前の朝活でつめた四ノ沢の入り口の薮化したアオキを刈りました。
刈る前の写真はありませんが、人がいるポイントから先が全く見えないほど木が茂っていました。
ここは木を刈った途端に気持ち良い風が流れたんですよね。これがどれだけ気持ちよく感じたか。心なしか緑が美しく感じます。

アオキを刈った四ノ沢入り口

そして、五ノ沢へ。
これが沢です。藪で暗くて前が見えない状態から

before(ポイント1)

このように木や草を刈りました。ちょうど人間が歩けるトンネルができました。これが煙突効果で風が流れやすくなるんですよね。

after(ポイント1)

沢のど真ん中に木があったり

before(ポイント2)

これも根本近くから切って処理しようとしたら、枝が絡まっていて大変なことに。
しょうがないから苦手なしがらみを作りました。しがらみの必要性を体感できたので貴重な体験です。
切るのは良いんだけど、風を通すためには、切った枝葉をまとめて置いておくことはとても重要になります。水の流れを邪魔しないように、風の通りを邪魔しないように、考えて置くことが必要なんです。

道理に適っていることがわかると自然と覚えていきますね。

after(ポイント2)

前が全く見えない状態から緑のトンネルができました。

汗だくだし、全く進んでいないしで、午前中が終了。
沢を歩いて戻ります。すでに体力も終了しています(笑)

動物の群れと遭遇

お昼を食べて午後の作業です。

そしたらなんと!

真ん中辺りの木橋に何が見えますか?

猿軍団が近くの木を通り過ぎて行きました。
二、三十頭の群れだったでしょうか。
斜面を駆け降りたり、小猿が抱えられていたり、母猿の背中に乗っている子猿がいたり、どうどうと歩いて渡るボスがいたり、移動をずっと見ていました。

拡大して、さらに動画にしてみましょう。

猿軍団

猿で盛り上がる人間たち。

人間が猿を見ているのか、それとも猿が人間を見ているのか、どちらなんでしょうね。

山頂へ

お昼休みに作戦タイム。薮がひどくて進まないので、作戦変更。

午後は「なんとしてでも山頂まで行く」という意図でスタート。

そうしたら沢に水が流れ始めていてビックリ!
人が歩いたからか、風が通ったからか、はたまた別の理由からか、水が流れ始めました。
人の手が入ると自然は元の形に戻るのでしょうか。
人間さえも自然の一部でしかないのかもしれません。

水が流れ始めた沢

気分は完全に探検隊です。

3人の役割分担は、先頭のMさんが剪定をなるべくしないでとにかく進んでいく、2番目の僕は進みやすいように剪定をする、しんがりのAさんは丁寧に剪定をする。

結果これがうまくいきました。

こんなところに突っ込んでいきます

上の写真は段差になっており、ここを超えたら上まで行くしかないなという覚悟が定まりました。なぜなら降る方が難しくなるから。まさしく分岐点。

僕の悪戦苦闘しながら楽しんでいる様子も紹介(笑)
満足げな顔をしていますね。

Photo by みどりん

この沢で3本目の鹿の角を発見。どうもこの辺りには、鹿がいるみたいですね。

鹿の角

と思っていたら生きている鹿にも遭遇。彼らもこんなところに人間が登ってくると思っていなかったのでしょう。ビックリして逃げて行きました。

沢の源頭部

とうとう源頭部にでることができました。すり鉢状になっています。
写真を見ておわかりになるでしょうか?
かなり急な斜面です。

後ろには切り開いてきた薮沢が見えます

この斜面自体は乾いていてガレガレです。

ここは山の歩き方に慣れていないと登れない斜面です。初心者には難しいですね。

何が難しいかといえば、3つあります。造作、歩き方、心得です。

1つ目の造作は、斜面を崩さないように、基本の造作である「足掛かり」が作れることが必須です。
2つ目の山の歩き方は、理解していることと実践できていることが大切です。足の置き方や体の使い方は経験を積む必要がありますね。山を歩きながら学ぶことが大切です。
3つ目の心得は、精神的な問題です。恐怖心があると動けなくなっちゃうので、慣れが必要です。

何回か枯れ沢復活&ホタルの会に参加してくれて、この人なら大丈夫と太鼓判を押した人しか連れて行けないでしょう。

今回の3人はさすがの精鋭揃いなので体はボロボロになりながらも無事に山頂へ。

実は、この時に落石の直撃にあい、左ひざ、左足甲に打ち身ができました。落石の直撃は自分の造作が雑だったせいだったので反省です。この怪我は、山を歩いている時には痛みはなく、降りてきてから痛みが増していくという。人間の身体はよくできていますね。痛みを感じていたら歩けないもの。

沢の始まりの稜線にでたぞ!

行けるとは思っていなかったので、達成感がハンパないです。

ここで意識して休憩を取りました。水を飲んでたわいもない話をして過ごします。

山は降りるまでが本番です。緊張をゆるめて緩和することが重要なんです。そうしないと集中力が落ちますからね。

どうもこの時点でホタルの会の終了には間に合いそうもないことに気付きました。でも、ここで間に合わせなきゃと焦ると事故になる確率が格段に上がります。なので、自分の安全第一という意識を持ちながら山を降りることにしました。無事に帰ることに全集中です。

稜線からトレラン道をトラーバースし、峠道を越えて、とある尾根を降りたらニノ沢入り口の本隊が造作していたポイントに。そこには斜面に丁寧に作られた「しがらみ」がありました。記念撮影を。

本隊の造作ポイント

さらにそこからベースキャンプに戻り荷物を回収し山を降りました。みなさんは帰宅後でありましたが、しげちゃんが出迎えてくれました。

お抹茶をいただきながら、お灸をすえながら、今日の振り返りをしました。皆様、喜んでいただいたみたいでよかったです。もちろん僕もむちゃくちゃ楽しかったです。

池造作

4月頭に作った池は、沢が枯れ気味でも機能していました。
毎回手を入れてメンテナンスをしています。
今回は明日の大雨で右の沢から水が流れて来るであろうということを予測して、水が流れやすい道をつけました。

枯れ沢復活だけでなく、生物の多様性を作りたいんですよね。水は命の源だから。そして、水の流れを利用するにはどうしたら良いのか試しています。そう、すべては実験なのです。

翌日の天気は…

で、実際に降った雨は記録をみるとハンパなかったようです。

実際の天気

次回行くのが楽しみで仕方がないです。もっと雨が降るでしょうから水がどのような力を発揮しているのか興味津々です。

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